平山 亜美さん


農業生産法人 ウーマンメイク株式会社

代表取締役 社長 平山亜美(ひらやまあみ)さん

 

大分の空の玄関口である空港にほど近い、国東市安岐町。風光明媚な

農村地帯に、新しくて立派な三角屋根のビニールハウスが建ち並んでいます。ここで生産されているのは「やさいまま」と名付けられた水耕栽培のリーフレタス。農業生産法人「ウーマンメイク株式会社」の社長を務める平山亜美さん(28)が、女性スタッフ15人とともに栽培に取り組み、平成28年8月から本格的に全国への出荷をスタートさせています。

 

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農業も経営も経験ゼロからのスタート。

 

大阪出身の平山さんに大分との縁ができたのは、大学進学から。卒業後に別府の化粧品会社で働いていた時、安岐町で物産館を起業するプロジェクトに興味をもち、移住を決めました。「大学時代に学んだ語学を観光に活かしたかった気持ちもありました。でも、物産館で通年販売できる野菜がないといけない、という話になって。はじめは小規模での栽培を考えていたんですが、せっかくなら体制を整えて、品質の高い野菜を、ある程度の量出荷しようと、農業の会社を立ち上げることになりました」と平山さん。プロジェクトを進める中で、バックアップをしてくれる地域の人々と出会ったことも大きかったそう。「指導を受けているうちに、気付いたらどんどん規模が大きくなってました(笑)」ときっかけを振り返ります。

 

農業はもとより、経営のノウハウも全くないゼロからのスタート。「恐いもの知らずで挑戦できたのもあります」という平山さんですが、もうひとつ、やる気の源となっていたのは、別府で働いていた時に出産したお子さんの存在でもありました。「シングルマザーなので自立して働きたい気持ちが強かったし、同じように働きたい思いをもつ女性を後押しできる会社をつくりたいと思いました」と話します。

 

水耕栽培は、季節を通して天候に左右されずに収穫できるのが特長ですが、ほかにも多くの魅力があるといいます。「収穫作業は腰の位置でできるし、ハウス内もきれいで泥で汚れる心配もありません。またレタスは段ボールいっぱいに商品を詰めても2kgくらいと比較的軽いので、身体への負担も少ないんです。色んな意味で、女性にとても向いていると思います」。「野菜そのままの新鮮な味を届けたい」という思いと「やさしいママのような愛情で育てている」というコンセプトを込めた「やさいまま」というネーミングにも、女性らしさがあふれています。

 

確実な販路が商品PRのカギに。

 

現在のハウスの広さはおよそ30アールで、4種類のレタスを栽培。農業の先輩や県の農業指導員などの指導を受けながら、手探りで進めてきました。「野菜は正直です。ハウス内の温度によって換気をしたり、季節で肥料の量や種類を調節したりと、こまめに手をかけるほど、品質の良いものが育つことが分かってきました」。

 

収穫後は作業場で袋もしくはパックに詰めて出荷。現在の出荷先は、県内の一部のスーパーと関東圏ですが、確実な販路が確保できているところも、「ウーマンメイク」の強みです。「市場に出すと、スーパーのバイヤーさんと直接お話する機会はなかなか頂けないんです。売り込みに行っても、プレゼンに5分間もらえるかもらえないかという厳しい世界。でも安岐町で農業をされている方の人脈があったので、一緒に営業へ行って、バイヤーさんに売り込みができたことが大きかったですね。はじめは『女性だけで作ってます』とPRしても、『だからどうなの?』と言われたんですが、具体的な包装の提案をしたり、女性目線で一緒に商品づくりをしていきたい意欲を伝えると、反応も変わってきました」と、たしかな手応えをつかんできた道のりを語ります。

 

 

女性が希望をもって働ける新しい農業を目指して。

 

現在「ウーマンメイク」で働いているのは、安岐町のほか武蔵町や杵築市に住む女性たち。「子育て世代から子育てをひと段落した世代の方まで、色々な方がいます。できる限りそれぞれの希望に合わせて、出勤日や時間のシフトを組みますし、それに応じて収穫量を調整することもあります。また働く仲間の居心地の良さなど、ソフト面の満足感を充実させたいですね」。たとえば、子どもが急に熱を出したり、やむを得ない事情で欠勤が出た時も、他のスタッフが代役を務めるなど、いつしか連携の輪ができているそう。そして設備で機械化できるところは取り入れ、その分子どもと過ごしたり、営業にまわったりと、効率も大切にして仕事や家族との時間をつくっているといいます。

 

「まだまだ農業に携わるのは男性が主で、バイヤーの方も男性が多いです。でもだからこそ、女性目線での意見が求められるし、出荷体制では大きな会社にできないような柔軟な対応をして、レシピの提案や流行への取り組みなど、女性ならではの細やかさが発揮できると思っています」。これからは、さらに出荷量を増やすためにハウスを拡大し、クレソンやセロリ、ベビーリーフなど、時期をしぼって様々な野菜の水耕栽培にもチャレンジするのが目標。「ソフト面の満足感と将来性で、農業というくくりではなく、普通に就職先のひとつとして選んでもらえる企業にしたいですね。地元出身の方も国東に残って働いて欲しいし、県外の方にも入社したいと思ってもらえるような、女性の夢が広がる場所にしていきたいです」。

(取材日:平成29年1月25日)